6月から診療報酬改定が施行されました。そこで今回は、弊社のクライアントのクリニックでの診療報酬改定対応をご紹介します。
7割近いクリニックで届出をしたのが、医療DX推進体制整備加算です。
これは医療DXの対応をしたクリニックを評価するための診療報酬ですが、現時点ではオンライン請求、オンライン資格確認、院内掲示をしていれば届出が可能であったため、多くのクリニックで届出をしました。
令和6年10月からはマイナ保険証の一定の利用実績、令和7年4月から電子処方箋の導入、令和7年10月から電子カルテ共有サービスへの参加が求められますので、今から準備を進めていき、基準が満たせない場合には施設基準の取り下げが必要になります。
外来・在宅ベースアップ評価料(Ⅰ)は、3割近いクリニックで届出をしました。5月20日に出た通知で、外来・在宅ベースアップ評価料(Ⅰ)については、6月1日から算定する場合でも、届出期限が6月21日までに延長されることになりました。
外来・在宅ベースアップ評価料(Ⅰ)は、もらえる金額の割に手間が多い、2年後も続いている保証がない、といった理由で届出しない所と、少しでも職員の賃金改善の原資にしようと届出をした所で、対応が真っ二つに分かれました。元々患者数が多かったり、訪問診療の回数が多いクリニックでは、算定金額が大きくなるため、届出を決断するきっかけになりました。
診療を補助している医療事務を対象職員に含んでよいのかわからず、また届出様式や言葉の定義が複雑だったこともあり、最後までこの対応に振り回されました。
年1回、報告書と次年度の計画書を提出しなくてはならないため、最後まで気を抜けない診療報酬です。
在宅医療を行っているクリニックでは、少数ですが、在宅医療情報連携加算を届け出た所がありました。
これは、5以上の関係機関と連携してICTによって患者情報を共有する体制が構築できると届出が可能になります。ICTは、厚労省が定める「医療情報システムの安全管理に関するガイドライン」に対応していないといけないため、医師会が介護施設との連携の際に活用しているMCS(Medical Care Station)を用いた所が多かったです。
在宅医療情報連携加算を届出して、90日以内に関係機関から記録された情報を取得して診療をすると、同意を得た在宅患者から月1回100点が算定でき、今回の診療報酬改定の中で評価の高い点数となっていますので、在宅医療を行っている先生は、ぜひ算定を検討してみてください。
在宅医療で厳しい改定となったのが、訪問診療の多い医療機関での在宅時医学総合管理料の減算規定です。
単一建物診療患者が10人以上の場合、直近3ヶ月の当該保険医療機関及び特別な関係にある保険医療機関(令和6年3月31日以前に開設されたものを除く)の訪問診療回数の合算が2100回以上だと、在宅時医学総合管理料の点数が60%になります。減算を免れるためには以下の(1)~(4)の基準を全て満たさなければなりません。
(1)直近1年間に5つ以上の保険医療機関から、文書による紹介を受けて訪問診療を開始した実績があること。
(2)当該保険医療機関において、直近1年間の在宅における看取りの実績を20件以上有していること又は重症児の十分な診療実績等を有していること。
(3)直近3か月に在宅時医学総合管理料又は施設入居時等医学総合管理料を算定した患者のうち、施設入居時等医学総合管理料を算定した患者の割合が7割以下であること。
(4)直近3月間に在宅時医学総合管理料又は施設入居時等医学総合管理料を算定した患者のうち、要介護3以上又は「特掲診療料の施設基準等」別表第八の二に掲げる別に厚生労働大臣が定める状態の患者の割合が5割以上であること。
この4つの基準は、在宅医療専門診療所(在宅医療の患者割合が95%以上)が減算を免れるための基準と、ほぼ同じです。
在宅医療の患者割合が95%以上の所だけでなく、3ヶ月で2100回以上の訪問診療をしている所も、在宅医療専門診療所と見なすという扱いの表れだと思われます。
今回の目玉の改定は、糖尿病・高血圧・脂質異常症の患者を、特定疾患療養管理料から外し、生活習慣病管理料へ移行させるようにしたことです。
多くのクリニックでは、検査費用が持ち出しになることを避けるため、あるいは患者負担が増えることを避けるために、生活習慣病管理料はⅠではなくⅡで算定することを決断されていました。最初にⅠまたはⅡで算定を決めると、その患者さんは容易に算定を変えることはできないため、どちらの点数で算定するかは慎重に判断してください。
生活習慣病管理料Ⅱの333点は、下記の比較表をご覧になっていただければわかる通り、特定疾患療養管理料で算定をした時と、最終的には全く同じ点数となっています。つまり療養計画書を立て、患者さんから同意を得る手間が増えても、点数の評価はされなかったということを示しています。
令和6年度診療報酬改定は、初再診料で少し点数は上がったものの、処方箋料や特定疾患処方管理加算、在医総管・施設総管で大幅に点数が下がったため、実質上マイナス改定だったと言っても過言ではありません。
そのため算定できそうな診療報酬は、なるべく基準を満たすようにして算定して、少しでも売上が下がらないように対応していくことをおすすめします。